宇宙の創生から破滅に至る要因を大胆な発想で描いた
壮大なSFファンタジー！！！
百億の昼と千億の夜 ／ 作品概要
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百億の昼と千億の夜 ／ こんな方にオススメ！
- SF作品が好きな方
- 歴史が好きな方（特に宗教・神話など）
- 人の存在意義に疑問や興味を持っている方
百億の昼と千億の夜 ／ あらすじ
釈迦国の太子であるシッタータ（悉達多）は世の中の無常を感じ、やがて国を捨て仏門へ入る。
そして波羅門により天上界へと導かれるのだが、そこではひどく荒廃が及んでいた。
梵天王からその原因が『阿修羅王』との戦いによるものであると解かれたシッタータはその真意を確かめるため本人との接触を試みる。
しかし彼は阿修羅王との対話により真の敵の存在を明かされることになる。
一方、同じく世界の歴史の異変に気付き始めた古代ギリシャの哲学者プラトンは、シッタータ・阿修羅王と共にこの宇宙の創世から破滅への真相に迫っていくが、その先には信じ難い陰謀が隠されていた。
百億の昼と千億の夜 ／ ココが面白い！！見どころ3つ紹介
- 宗教・哲学の根本をひっくり返す大胆なSFファンタジー
- 世界史上の偉人達が共演
- 『２次元化不可能』と言われた小説を芸術的な作画で漫画化
宗教・哲学の根本をひっくり返す大胆なSFファンタジー
人類史と共に密接に寄り添って来たあらゆる宗教・哲学の存在意義を非常に大胆で科学的な仮説でひっくり返すというのがこの作品の最大の魅力に感じました！
本書では、仏教において”56億７千万年後の末法の世（仏教の廃れた世界）に弥勒という沙門（出家した僧侶）が現れ人々を救い、素晴らしい楽園を人類に与える”と説かれています。
また、キリスト教においてはイエス・キリストの布教により”神がこの世を裁く『最後の審判』において永遠の命を与えられる者と地獄に落ちる者を決めるため人々は心を正しくしていなければいけない”と伝えられており、いずれも人間は遠い未来の幸福を夢見て現在の苦悩や悲しみに耐えているのですが。
しかし、実はそれらはある超越者の作為的な計画によるもので、それに気づいた阿修羅王・シッタータ・プラトンといった登場人物達がその陰謀を阻止するべく何億年という時間を巡る壮大な戦いに挑むというSF的な発想と展開が面白い設定となっています。
世界史上の王・神などの偉人達が共演
本書では仏教・キリスト教などに登場するシッタータ、阿修羅、イエス・キリスト、ユダ、大天使ミカエルといった存在やプラトンのような有名な哲学者などが同一の世界線で共演するというとても豪華でユニークな内容になっています。
先にも触れましたが本書のテーマが『宇宙の創生と破滅の真相』のため、その事に関わる重要人物としてあらゆる神々や王の存在が分野問わず登場する壮大なスケール感も必見です！
『２次元化不可能』と言われた小説を芸術的な作画で漫画化
あらゆる宗教・哲学の世界観が入り組んだ複雑な設定のため、原作者の光瀬氏でさえも『視覚化不可能』と思っていたそうですが、萩尾望都氏の深い造詣と作画表現により見事に漫画として昇華させているところが素晴らしいです。
原作ファンでもある筆者はどちらも何度も読み返していますが、漫画という規格の中であえて割愛している部分や、新たに加えた設定などの取捨選択が素晴らしく小説にはない新しい価値を生み出している作品だと感じました。
特に個人的に感動したところは阿修羅王を女性の姿で描いているところ、神秘的な宇宙や人物達のなんとも言えない抒情的な表情の芸術的な作画表現です。
本書を読んだとき、この作品は世界中のクリエイターの中でも萩尾氏でなければ到達出来ない境地に至った作品だなという印象を持ちました。
原作者の光瀬氏も過去のインタビューで以下のように称賛していました。
原作が私自身のものだから、たいへん語りにくいのだが、実際、よくやったものだと思う。
もともと視覚化することが難しい作品ではあり、週刊誌に連載している時の七転八倒ぶりと呻吟は知っていた。
だが別に助言も、激励もしなかったが、出来上がったものに滲んでいる苦渋と悲惨な思いは、まさに戦いを感じさせた。
萩尾さんは萩尾さんのやり方で原作を完全に我がものにし、乗り越えたと思う。
引用元：『テレビランド増刊 イラストアルバム⑥ 萩尾望都の世界』徳間書店
感想・おわりに
今回は自分が中学生の頃から夢中で読み返していた1作を紹介させていただきました。
その年頃は厨二病とでも言うのか、「自分は何ために生まれてきたのだろう」という思いや「世の中の不条理な事への憤り」が強く芽生え出した時期でもあったのですが。
そういった宛先不明の感情に対して、今常識として是非とされているものの曖昧さを仮説立てて合理的に提示してくれた救いの作品の一つだったのです。
また、この世界で誰も知り得ない絶望的な真実を知った阿修羅王が、それでも臆せず人々の本当の救済のため何億年という時間孤独な戦いに明け暮れる勇ましさにも大変勇気づけられました。
本書は読み終えた後、読者の心の奥に、ポジティブな余韻を残す素晴らしい作品になっていると思いますので興味のある方はぜひぜひ手に取っていただけたら嬉しいです。
ということでここまで読んでいただきありがとうございます！
それでは今日も一日お疲れ様でしたっ(^ ^)
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